このところ高崎市街地に様々なハコモノが出来るという情報がある。元・日本製粉の工場があった場所が新高崎体育館となって生まれ変わるらしい。
現在、高崎駅東口方面にある「高崎体育館」の老朽化が進み、規模の問題もあり、新たな施設を造ろうということになったようだ。
体育館以外にも大手スーパーのイオンが高崎駅西口に隣接して出店するようだし、東口には、あまり必要とも思えない大規模集客施設の計画もある。こちらなど400億円という東京スカイツリーに匹敵する予算規模で、あまりに無謀な計画だと思う。スカイツリーは全国どころか外国からのお客もやって来るけれど、高崎駅東口では、隣の市かその先くらいが関の山。回収が期待できそうにないため、税金の持ち出しになることが危惧される。建設費のみならず、運営費が毎年馬鹿にならない金額になるはずで、建物ができて、その時は気分がいいかもしれないけれど、未来への負の遺産となる可能性が高い。
JR高崎線と上信電鉄の線路に挟まれた広い三角形のスペース。
このスペースのすぐ横には上信電鉄の踏切がある。
昔は、買い物姿の人が見られた下町的な踏切だった。
このあたり、以前は南高崎駅横にセメント工場への引き込み線があり、そこまでの貨物輸送の運用が比較的多く、ジーメンス社製のデキ型機関車が元気にピストン輸送している姿をよく見かけられた。踏切から南高崎駅方面を覗き込むと、小さな電気機関車がなにやらちょこちょこやっている様子が見えてうれしくなったものだ。
デキがやって来ると、公園で遊んでいた子どもたちは、一斉に集まって電車見物となる。
自分は高校時代、このあたりの雰囲気が好きで、時々出没しては街の写真を撮っていた。今でも昭和の雰囲気が感じられる街角だと思う。
高崎市街地の中心部から見れば、人通りの少ないこのあたりから烏川方向に歩いて行くと河岸段丘を下る坂道となる。
坂の下には城南陸上競技場や城南プール、そして城南球場がある。
高崎市街地とはいえ町中とは言えないところに育った自分にとって、城南プールは大人のプールだった。確か、水深も一般的な公営プールよりも深く、子どもにとっては、ちょっと危険な雰囲気があり、友人が「城南で泳いできた」と言えば、心のなかで「すげぇ!」と密かに思ったものだ。
高崎の南西部に位置する城南球場は、市内随一の野球場で県都前橋の敷島球場に次ぐ規模を誇っている。
この球場のいいところのひとつは、元々の立地が烏川河川敷であるため視界が開けていて、榛名山や浅間山などが遠望できること。都会の野球場では味わえない田舎ならではのものだ。
この坂道、普段はそれほど行き来する道ではないのだけれど、毎年夏になるとかなりの高崎市民がここを通ることになる。
高校野球の応援だ。
炎天下、木陰のない坂道を下ると球場が近づくに連れ応援団の太鼓の音や観客の声援が聞こえてくる毎年の夏の光景。
高校時代の刹那、白球を追いかける球児たちのストイックなドラマは、高野連やプロ候補生の醜聞を数えきれないほど聞かされていても感動せざるを得ない素晴らしいものだと思う。
当然かも知れないが、城南に出かけるのは春が過ぎて暖かい日差しが戻ってきてからだ。
その為か、ここでは冬のイメージが湧かない。この時期の周辺は、夏の賑わいと対照的に寂しい世界となる。
高崎市民の中には、この坂に対して自分と同じような感傷的なイメージを持つ人が多いのではなかろうか。過ぎてしまった[あの頃]、人生の「真夏」を懐かしむ気持ちは、誰でも同様に胸に訪れるものだと思うのだ。